約 1,077,071 件
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/117.html
わたしは考えるよりも先に行動していた 「やめなさい!」 ギーシュを庇う様に立つ 「どうゆうつもりだ、ルイズ」 「ここまでよ、勝負はついたわ」 「コイツはまだ生きている、勝負は付いちゃいねえ」 「もう、ついたのよ。昔は命を取り合ってたけど、今は違うわ」 「なんだそりゃ、ええ、おい。」 貴族だメイジだ、つっても、そこら辺のナンパストリートや仲よしクラブで 大口叩いているいるような負け犬どもと同じじゃねーか 貴族を侮辱する様な考えが流れてくる。違うと言ってやりたいけど 言うと、もう取り返しがつかなくなるので我慢する 「それに殺したら捕まって牢屋に入れられるわ、もちろん主人である、わたしもね、 そんなの嫌よ。だから・・・お願い、プロシュート」 まさか、わたしが使い魔に命令じゃなく、お願いをする事になるなんて 「・・・お前やっと俺を名前で呼んだな」 そうだっけ? 「ハン、いいだろう。その小僧は殺す価値も無い」 「ありがとう、プロシュート」 それにしても、この使い魔が名前で呼ぶことを気にしていたなんて 意外でなんだか可笑しかった 先生にギーシュの治癒を頼み、空き部屋のベットに寝かしつけた。 今、この部屋には、わたしとプロシュート、ギーシュとモンモランシー。そして、メイドが1人いる メイドがプロシュートに声を掛ける 「あの、すいません。あのとき、逃げ出してしまって」 食堂の騒ぎの時、彼女もその場にいたのだろう 「別に、お前は関係ねえだろ」 「ありがとうございます」 メイドが深くお辞儀をした後、部屋から出て行く プロシュートの冷たい態度もメイドには巻き込まない為の思いやりに見えたのだろう 「ルイズ。彼は何者なんだ?この僕のワルキューレを倒すなんて・・・」 起きたのだろうギーシュがわたしに疑問を投げかける 「ただの平民でしょ」 「ただの平民だな」 わたしと、プロシュートが答える 「君たちは、僕を馬鹿にしてるのかい」 「よく気がついたなマンモーニ」 プロシュートがニヤリと笑う 「「ぷっ」」 わたしとモンモランシーが吹き出す 「なっ、モンモランシー君まで笑うなんて酷いじゃないか」 「でもギーシュ、あなた何時も、父上兄上って言ってるじゃない」 わたしが答えてあげる 「先祖を誇りに思う、何がいけないと言うんだね」 ギーシュが反論する 「誇りに思うことと、乳離れ出来ねえのは別だぜマンモーニ」 プロシュートが言い放つ、ギーシュは顔を赤くし唸っている 「もう、大丈夫だな行くぞルイズ」 「何、仕切ってのよ」 プロシュートが部屋から出て行く 「待ちたまえ、話はまだ終わっていない。彼は一体何者なんだね?」 部屋からギーシュの声が聞こえてくる そんな事、わたしが教えてほしいわ
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/674.html
人の噂も七十五日とはよく言ったもので、しばらくするとンドゥールへの好 奇の視線は徐々に数を減らしていき割りあい静かな日常が流れるようになっ た。その中でも変わらないのは、一歩寝室を出ると始まるキュルケとルイズ の喧嘩ぐらいなもの。ンドゥールとキュルケの親友であるタバサはそれが治 まるのを待ってから食事に行く。途中、街の武器屋から買い上げた喋る剣の デルフリンガー(特に変わったことはなかったので場面は省略)があまりの 疎外感に悶え苦しむ声を上げるのも日常のひとつになっていた。 そんなある日のこと、先日サモン・サーヴァントを行った学院の2年生たち は中庭で熱心に自分の使い魔たちに訓練を強いていた。おかげで一種の魔境 のようなものを形成している。その光景をルイズは憮然とした表情で眺めて おり、彼女の後ろでンドゥールはそばのシエスタに説明を求めていた。 「品評会ですね。毎年恒例の行事です。召喚した使い魔を学院中に紹介する んですよ」 「それには、俺も出るのか?」 「当たり前でしょ!」 ルイズがンドゥールに振り向いて怒鳴るが、またもとの表情に戻ってしまう。 「どうした?」 「どうしたもなにも、すっかり忘れてたのよ。なにをやらせればいいのか、 気の利いたスピーチとかできる?」 「やったこともない」 はあ、と、ルイズは大きくため息をついた。 「でも、困りましたね。今年はアンリエッタさまがごらんになられますのに」 「それよ! それが問題なのよ! どうしたらいいの!?」 桃色の艶やかな髪をルイズは乱暴にかき乱している。切羽詰った状況なのだ ということは明らかだった。 「アンリエッタとは……」 「この国の王女さまです。陛下がお亡くなりになってからは国民の象徴的な お方なんですよ」 「それだけじゃないけど………ともかくンドゥール、なにか特技はないの?」 「俺様の出番だな!」 「うるさい」 せっかく自己主張したところで持ち主から手厳しい扱いを受けるデルフリン ガー。鞘に収まったままでも哀愁が漂っているが、誰も気をかけるものはい ない。 「それでは、私も姫様のお出迎えの準備がございますので。それで、ですね、 あの、ンドゥールさま、」 「なんだ?」 「その、よろしかったら小腹が空いたときにでもお召し上がりになっていた だければと思いまして、このようなものを」 白い布を被せた小さなバスケットをシエスタは差し出した。かぐわしい香り がンドゥールに届く。 「……いただこう」 「ありがとうございます!」 シエスタは大きな声で礼をいい、小走りにその場を去っていった。 「相棒やるなあ」 「あんたいつからあのメイドとそんな関係になったのよ」 デルフリンガーとルイズが声をかける。片方はからかうような調子、もう片 方は若干声音に棘があった。どちらがどちらかは言うまでもない。 ンドゥールは二つの声を無視して受け取ったそれを丁重に懐に収めた。 「それで、いい案は浮かんだのか?」 「なんにも。大体、あんたにできることがなんなのかよくわかっていないん だもん」 じっと非難を込めた目で見上げた。暗に異常聴覚だけが特技ではないだろと 尋ねている。が、ンドゥールはそれを無視する。 「俺にできることは戦うことだ」 「誰と戦うってのよ。親衛隊とでもやるっていうの?」 「それでもかまわん」 ルイズはンドゥールをにらみつける。 「あのね、ギーシュに勝ったぐらいで調子に乗ってるんじゃないわよ! 親衛隊なんか、一人でギーシュの10人分はあるわよ! 無謀もいいと ころだわ!」 大声だったおかげでそれはギーシュに届き、彼は打ちひしがれてモグラに慰 められることになった。 「しかし、ギーシュ10人なら楽だ」 追撃が入る。 「……それは、そうかもしれないけどだめよ! 大体いまのは例えなんだし、 実際は10人どころか100人かもしれないのよ!」 再追撃。 「まあ、例えはどうでもいい」 ようやく攻撃がやんだ。 「ともかく俺にできることは戦うことだけだということだ」 「あんたねえ、蛮族じゃないんだから」 「もともと似たようなものだったよ」 ンドゥールは軽々と口にした。しかし、少なからずルイズには衝撃的な内容 だった。 「……なんで?」 「国の事情というのもあるが、やはりこの目が大きい。仕事も何もなければ そういうことをするしか生きる方法はない。躊躇いはなかったさ」 「捕まったりとかしたら、どうなってたの?」 「死刑だ」 考えることもなく即答した。 ルイズがンドゥールを見ると、微笑を浮かべていた。諦観を含んだものでは なく、そこには『満足』があった。なぜ、そんな過酷な人生を送っていなが らそんな笑みを浮かべられるのか、ルイズは疑問を持つとともにうらやまし くなった。 結局、ンドゥールがなにをやるのかはまったく決まらぬままその日が来てし まった。 学院の全生徒、および教師によってのアンリエッタ王女の出迎えは昼に終わ ったものの、歓迎の宴が長く続いたので生徒たちが部屋に戻るころには夜の 帳が下りてしまっていた。 ルイズは愛用の寝巻きを着てベッドに腰をかけ、ンドゥールはデルフリンガー をぶん、ぶん、と振るっている。ただ振り回しているだけで、技巧も何もない。 「ほんとにからっきしなんだ」 「ああ。第一、俺はこいつを武器に使うために選んだのではない」 「おいおい、そりゃひでえよ相棒。剣は使ってナンボだぜ?」 「お前が他より勝っていることは喋ることじゃないのか?」 「心がいてえぜ! て、待てよ。確かに喋れるけどよ、ただ無為なことばか りじゃねえぜ。お前さんのいまの状態、それがなんなのかを教えられるぜ」 「いまの状態?」 ルイズが聞くと、ンドゥールはデルフリンガーを壁に投げつけた。 「余計なことを口にするな」 「わ、悪かったって、そんな怒るなよ相棒」 鞘に収まったまま謝るがもう遅い。つかつかとルイズがンドゥールに歩み、 その無骨な顔を見上げた。 「いまの状態ってなんのことよ。答えなさい」 「……悪いことではない。それでいいだろう」 「よくないわよ! いいこと、使い魔の状態は逐一主人は知っておかないと ならないの! いいから教えなさい!」 ンドゥールはしばしの間黙っていたが、ゆっくりと口を開きかけた。が、何 を思ったのか突如ルイズを抱き上げてベッドへと連れて行った。そして横た わらせると、何も言わずに大きい手で彼女の口をふさいだ。 そこでようやくルイズは自分がどえらい状況になっていることに気づいた。 例の行為、それが連想される。 脳が爆発しそうなほど彼女は混乱し、めいっぱい暴れようとした。だが、 ンドゥールの力は強く、跳ね除けるどころか微動だにできなかった。 (ああ、お母様。申し訳ありません) ルイズがそう諦めかけて祈りだしたとき、不意にンドゥールは手をどけた。 涙目だった彼女は三度瞬きをして、そばに立っている使い魔に食いかかった。 「あんたいきなりなにすんのよ! この犬ッコロ!」 「説明せずにいきなりあんなことをしたのはすまなかった。だが、少しばか し気になることがあったのだ」 「へえ、言ってみなさい。なによそれは」 「何者かがこの宿舎に入ってきた」 ルイズはンドゥールの顔を見た。短い付き合いだが無意味なうそをつくよう な男ではないと改めて確認した。 「念のために聞くけど、ギーシュの逢引じゃないでしょうね」 「それなら足音ですぐにわかる。入ってきたのはこの宿舎で寝泊りしている 誰のものでもなかった。が、心配することはなくなった。なぜ彼女が、今現 在ここへ向かっているのかは不明……」 コンコン、と、ンドゥールの話をさえぎるようにドアがノックされた。ルイ ズは緊張ですぐさま顔を張り詰めさせたが、その使い魔はというとなんの警 戒心もなしに扉を開けた。するとフードを被った女性が一人、飛び込んでき た。 「あ、あなただれ?」 そう尋ねると、その人物は顔を露にした。ふんわりとした黒髪にやわらかい 表情、ほんの数時間前までルイズは彼女を見ていた。 「ひ、姫殿下!」 フードの下から現れたのは、アンリエッタ王女だった。彼女はぎゅっとルイ ズに抱きついた。 「ああルイズ、ルイズ、懐かしいルイズ」 「いけません姫殿下! このような下賤なところへ来ては!」 「そんなことを言わないで。お友達じゃないの」 「積もる話があるようなら出るが」 ンドゥールがデルフリンガーをもって尋ねる。そこでようやく王女も彼の存在に 気づいた。 「……ルイズ、そういえば彼はどなたなの? 昼もあなたのそばに連れ立って いましたけど、恋人?」 「こい………違います! こいつはそんなんじゃなくて、ただの、ただの使 い魔です!」 「使い魔……でも、彼は人間では。なにかが擬態しているのですか?」 「俺は人間。ンドゥールと――」 しゃべる途中でルイズの攻撃が入った。 「何をする」 「言葉遣いを弁えなさい! 言ったでしょう、姫殿下なのよ!」 「いいのルイズ。堅苦しいのは抜きで。それにしても、本当に人間なのです か?」 「いえ、その、こいつはちょっと変わったやつでして、」 「盲目なのだよ」 まぶたを上げて、光の映らない瞳でアンリエッタを見つめた。彼女もやはり 驚いたが、怖がることはなく哀れむこともなかった。そこはさすがに王女で あった。 「それで、そもそも王女はなぜここにやってきたのだ?」 「いえ、単に懐かしいお友達の顔を見たくなりまして。あとはルイズが明日 なにをするのかが気になるぐらいですわ」 「………」 ルイズはものの見事に固まった。 まさかこの時点でまったくもってきまっちゃいませんなどと口が裂けてもいえ ないからだ。そんな恥知らずなこと、敬愛する人物に誰が言えようか。 「何も決まってない」 「んがー! 何で言うのよ! このバカバカバカー!」 「黙ってても仕方なかろう。でだ、王女よ。ついでだ。その件で頼みがある んだが、」 「あんた、まさか……」 ルイズは黙らせようとした。しかしンドゥールはそれを頼んでしまった。そ してアンリエッタは、快く応じてしまった。 もはや後戻りはできるはずもなかった。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1850.html
「散々、とはいかないまでも、あまり良い出来ではなかったね」 ため息をつきながら、桃色の少女がけだるげに二人の男に話しかけていた。 ここはトリステイン学院の女子寮。ルイズの部屋である。 時刻はすでに夜半を過ぎている。このとき、ルイズとその使い魔たちは先ほど行われた『使い魔の品評会』の反省会をしていた。 結果から言おう。ルイズの品評会はあまり好評を得られなかった。 結局、ルイズたちの演目は、ブチャラティが舞台会場に出て、挨拶をするという、至極単純なものであった。 そのときブチャラティはトランプを使った簡単な手品を披露したが、はっきり言って地味であった。 しかも、その次に出演した使い魔がタバサの巨大な風竜であった から、会場の雰囲気は完全にタバサとられてしまった。ちなみに、今回の品評会の優勝はタバサとその使い魔、シルフィードであった。 「でもいろいろな幻獣が見れた僕としては、メチャ有意義だったぞ」 露伴が今日スケッチした奇怪な動植物の群れを眺めながら言った。この男は、心底上機嫌である。 品評会のときは衛兵の邪魔もなく、思う存分使い魔達の取材ができたようであった。 「特に恥はかかなかったけれど、ヴァリエール家としては失格ね。エレオノール姉さまが会場にいなくて本当によかったわ。でも、なんか引っかかるのよね…… 何か忘れてるような……」 ルイズは腕を組みながら、部屋中を歩き回っていた。 「嬢ちゃん、自分の使い魔が『人間の平民』だってことが皆に大公開されちまったわけだが、 嬢ちゃんの言いてーことはそーいうことか?」 「そうよ! そうだわ! よりによって姫様に……」 ルイズの顔が一転して蒼白になる。 彼女の顔から尋常ではない汗が流れ始めている。彼女の目元は暗く、低い声で発せられる独り言は何かの高等な呪文のようにも聞こえた。 「もうダメよ姫様に嫌われてしまうもう合わせる顔がないわそれにヴァリエールの家にも使い魔のことが知られてしまうわエレオノールの姉さまや母様達にどんなことを言われるか最悪学院を退学させられるかもうんきっとそう……」 「でも、使い魔といってもあまりすげぇのはいなかったよな! ブチャラティ!」 「えぇ? あ、ああ。逆にモグラとかフクロウとか微妙なものが多かったな! なあ、デルフリンガー」 ルイズの呪詛がぴたりとやむ。彼女はゆっくりと使い魔たちに振り返った。 その顔はなぜか幽鬼のように青白い。 「……そう?」 「そうだぜ! それとオレのことはデルフって呼んでくれ! ブチャラティもな!」 「……そう。ありがとう、デルフ。 それに所詮使い魔なんてどれも似たり寄ったりね! その中に人間がいたってちっとも不思議じゃないんだから! ……多分」 「今度は一人で笑い始めたぞ……どーすんだ? ブチャラティ」 「露伴、お前も何か言ってくれ……ってこんなとき位スケッチはやめろ……」 十分程経過しただろうか? 彼女はそのような一人わらいを続けた後、大きく深呼吸を始めた。 「済んでしまったことはいまさら後悔しても始まらないわね。 今夜はとりあえず寝て、明日これからのことを考えましょう。 着替えて寝るからみんな外に出て」 「ああ、おやすみ」 ブチャラティは安堵の表情を隠せない様子で返答した。 「じゃ、明日な」 露伴は満足げにスケッチブックを閉じると、デルフをつかんで立ち上がった。 「そーいうことで、しっかりとイイ夢見なよ嬢ちゃん」 彼らが退室すると共に、ブチャラティの手でルイズの部屋のドアが閉じられる。 「今日はものすごく充実したいい日だったな! いい取材日和だった」 「俺は最後にすごく疲れたよ……」 「ロハン、オメー……ある意味すげー尊敬できるぜ」 二人が女子寮の入り口の前でまさに別れようとするとき、物陰から女性の声が発せられた。 「もし……そこにいらっしゃるのはルイズの使い魔殿ではないですか?」 上品だが、声の芯がか細い。それにどこかで聞いたことがある。 「何者だッ?」 ブチャラティは声を低くしてそれに答える。それと同時に、彼は声の主がいると思われる物影から、ルイズの部屋のドアを守りやすいような位置に移動した。 「わたくし、アンリエッタ・ド・トリステインと申します」 物陰から姿を現したのは、はたして、紛れもないトリステイン王女その人であった。 「『ブチャラティさん』でしたわね? このような場です。 身分など気にせず楽にしてください」 「ちょっと待て、ひとつ聞くことがある。なぜ、一国の王女がこんな所にいる?」 露伴の詰問はしかし、王女の次の言葉でとぎられることとなった。 「まあ! あなたはキシベ=ロハン殿ですか? マンガ家の! わたくし、あなたが毎週描かれる『ピンクダークの少年』だけが王宮での唯一の楽しみなのですわ!」 「そ、そうかい。そいつはよかったな……」 王女は露伴に駆け寄り、彼の両手を覆うようにつかみ、畳み込むように話しかけた。 狂信者の目つきで訴える王女の剣幕に、さすがの露伴もたじろいでいる。 その様子さえ気づかず、アンリエッタ王女は握手をするように露伴の両手を上下させ叫ぶように話を続ける。 「ええ! あなたのマンガはとてもすばらしいですわ! 『ブルーライトの少女』もすばらしかったですけれども、やはり『ピンクダークの少年』にかなう娯楽はハルケギニア中、いいえ、エルフの世界を探しても見つかりっこないでしょう!」 「そうか。あ、ありがとう……」 「そんなことより、だ。王女様はなぜこんなところにいる?」 ブチャラティの言葉に我に返ったアンリエッタは、返答より先に自身の杖を振り、『ディテクトマジック』の魔法を唱えた。光の粉が、周囲十メイル程に降り注ぐ。 「……どうやら『監視』は無い様ですね」 王女はホッとため息をつき、初めてまともな笑顔を彼ら二人に向けた。 「どこに目が光っているかわかりませんものね」 「そう…………『監視』…………無いのね」(ニヤリ) 『ヘブンズ・ドアー』!! 次の瞬間、王女は意識を失った。 そのまま地面に倒れかかるが、岸部露伴に体を支えられる。 彼はそのまま王女の『本』を興味深そうに眺めている。 露伴の傍らにいるブチャラティが周囲を警戒をしつつ、相方に尋ねた。 「どうだ、露伴。彼女はルイズにとって安全な存在か?」 「大丈夫だ。こいつに悪意はないらしい。何かに操られているということもない。 ルイズとは気の置けない旧友のようで、今回はルイズに友人として会いにきたようだ。どうやら頼み事があるらしい」 「そうか」 ブチャラティはホッと息をついて警戒を解いた。いいかげんこの学院の雰囲気にもなれないといけないな、と思いながら…… 「なになに……彼氏はいない。 スリーサイズはB84/W59/H85……」 「おい…」 (『キング・クリムゾン』!) 「それ以上は…」 (『キング・クリムゾン』!) 「ちょっと待て…」 (『キング・クリムゾン』!) 「ロハン!」 (『キング・クリムゾン』!)「……それに初めてキスをした時舌を入れられてるぞ」 「 い い 加減 に しろッ!! ロハン!!」 「わかったよ(面白くないやつだな)……『今のことはすべて忘れる』と……」 「聞こえてるぞ…」 その後、意識を取り戻した王女は、先ほど起こった事態にはまったく気づかずに、ブチャラティにささやくように話しかけた。 「ルイズはいますか?」 「ああ、いま寝るために自分の部屋で着替えているところだ」 「では、ブチャラティさん。その部屋まで案内してくださいませんこと? それと、大変申し訳ないのですが…… 今回はルイズと会うために参りました。ミスタ・ロハンは、今回は部外者です。 これ以上はミスタ・ロハンといえども足を踏み入れてほしくないのです」 「わかってる。気にすんなよ、実は僕もルイズの使い魔だ。ここにブチャラティと同じルーンが刻まれてあるだろう?」 そういいつつ、露伴は自分の手の甲に刻まれたルーンを見せ付けた。 ついでに、ブチャラティの腕を引っ張り、同じ紋章をアンリエッタに見せている。 その紋章を見たアンリエッタは目を丸くしている。 「まあ、使い魔が二人も……ルイズは子供のころから一味違う人でしたけれども、彼女はすごい人ですわね」 王女は心底感嘆したような声を発した。そこにはルイズを蔑視するような意思は、まったく見受けられない。むしろ羨望を感じる声の響きだ。 「そのようなことであれば、御二方、ルイズの部屋までご案内くださいまし」 ルイズの部屋に、アンリエッタを連れたブチャラティたちが進入していた。 「すっかり寝てしまっているな……」 ブチャラティは嘆息した。彼がいくらルイズの部屋をノックしてもまったく返事が なかったので、一行はルイズに無断で彼女のの部屋に入っていた。ちなみに、鍵は アンリエッタの『アンロック』の魔法で解除している。 「ルイズは熟睡しちまってるぜ」露伴はめんどくさそうに応じた。 彼女が寝てしまったら、なかなかおきないんですよ。 たたき起こせば起きますがね、僕はやりたくない。 露伴の傍若無人な態度に気にした様子もなく、アンリエッタはなぜか自信たっぷり に応じた。 「ええ、とてもよく知っていますわ」 王女がベッドで寝ているルイズにそっと近づき、耳元でルーン・マジックをそっと囁 いた。 「↑↑↓↓←→←→BA」 「ふにゃ……ヨガファイア……ハッ」 ルイズが突然目覚めた。それも寝ぼけずに、完璧に。 「あれ……姫さま?」 あわててベッドから起き上がるルイズに向かって、感極まったようにアンリエッタが 抱きつく。 「ああ! 私のルイズ! 私の数少ない、心の許せるお友達! 今までどんなに会いたかったでしょう! 今までどんなにお話したかったことでしょう!」 「ひ、姫様、もったいないお言葉にございます」 ルイズは急に抱きつかれたためか、はたまた寝起き姿のまま王女に遭遇したためか、 完全に舞い上がって身体を硬直させてしまっている。 アンリエッタはルイズの首に抱きしめた腕を放さずに感極まったように叫んだ。 「まあルイズ! そのような堅苦しい言葉遣いはおやめになって! わたくしたち、幼いころは人形をとりあって取っ組み合いをした中ではありません の」 「ええ、そうですね。あの時、私は姫様の覇王翔吼拳をおなかに受けて気絶してしま いました」 「それから二人してラ・ポルトの爺にしかられたわね」 ようやくルイズを抱擁から開放したアンリエッタは、それでもルイズの両手を握り締 めながら、慈しみのあふれた眼差しをルイズに向け、微笑んだ。 その笑顔は、先ほど行われた品評会の会場で見せていた笑顔とは似ても似つかぬ、温 かみのあるものであった。ルイズはその表情の中に、安らぎの感情をを感じていた。 ルイズはようやく落ち着きを取り戻し、アンリエッタを王女としてではなく、旧友と して向かいあった。 二人ははにかんだように、在りし日の美しい思い出を振り返っていた。 (王宮の中庭にて……) (「うおおッ! 『人形』はわが手にッ!」) (「ルイズがラ・ポルトから『人形』をGetする方法を見つけたというのなら…… それはそれで利用すべきだわ……」) To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/460.html
朝もやの中ルイズが一人で馬に鞍を付けていた。 そこに足音が聞こえルイズがその方向に振り向く。 プロシュートがデルフリンガーを手に持ち朝もやを掻き分けるようにしてこちらに向かってきている。 もやに隠れてよく見えないが視線が合った気がして思わず視線を下に反らす。 昨日見せたあの冷徹な殺意を持った目を思い出したからだ。 「出る準備をしてるって事は、あの姫さんの覚悟はできたようだな」 改めてプロシュートと視線を合わせるが、もうスデにあの目はしていなかった。 それを見てルイズが昨日の事を問いただす。 「昨日はなんであんなに怒ってたのよ…?組織とか反乱とか言ってたけどそれが関係あるの?」 答えるのに少し躊躇したがプロシュートが口を開いた。 「あの時も言ったがオレ達チームはある組織に属し任務をこなしていた。 だが命がけで任務を成しても何一つ信頼されずに『シマ』…まぁこっちでいう領地みてーなもんだ。 それすらも与えられず使い潰されるだけだった。それを不満に思ったオレ達の仲間のうち二人が組織のボスの事を探ったが二人とも殺された」 さすがに暗殺チームである事やホルマリン漬けにされた輪切りのソルベの事は話はしないが話を続けた。 「それからしばらくしてオレ達はある情報を掴みそれがきっかけで組織を離反し その情報で掴んだあるものを奪取しようとして敵と戦い150キロの列車から突き落とされた時にオメーに召喚されたってわけだ」 「だからルイズ。オメーには命を救われたっつー借りがある」 それだけ言って話を打ち切り馬に鞍と荷物を付ける。 「…それでも、姫様の手を踏み付けるなんて下手したら処刑よ?」 「それでオレを処刑しようとするなら向かってくるヤツを全員始末するだけの事だ」 グレイトフル・デッドの射程なら魔法の射程外から老化させる事も可能の上、火を放てば氷も効かなくなり直触り並みの速度で老化もさせる事ができる やろうと思えばプロシュート一人でもこの国を滅ぼせれるだけの戦力は持っているのだ。 言いながらルイズを手で呼ぶ。 「……なに?」 スッパァーーz____ン ルイズの頭をプロシュートが叩きいい音が辺りに鳴り響いた 「~~~~~~痛ッ!痛いじゃない…!」 「人を『生き物』扱いしてくれた礼だ」 数秒沈黙が流れ―― 「なに…?気にしてたの?……意外とかわいいとこあるわね」 ルイズが痛がりつつ半笑いになりがら言い放つが、言われた方は2発目を繰り出すべく手を振り上げていた。 だがその手を振り下ろそうとした瞬間僅かだが自然に発生したものとは違う風を感じルイズを突くと同時にその反動で自らも後ろに飛び下がる。 さっきまで自分とルイズが居た場所に突風が吹き荒れた。 「敵かッ!」 「おお?やっと俺の出番か?兄貴ィ」 相手の素性が知れなくともこちらを攻撃してくるからには敵と判断し即座にグレイトフル・デッドを発現させデルフリンガーを抜く 敵の数、位置、そしてこの視界の悪さからして直触りを優先するより武器を持ち本体の強化を選んだ方が良策と判断した。 朝もやの中から一人の男が現れたがプロシュートはそいつに見覚えがある。 アンリエッタの出迎えの時に見た羽根帽子の男だ。 (王女の近くにいたからには親衛隊か…それに類する連中か。そいつが攻撃を仕掛けてくるって事は…やはりオレを始末するつもりか?) プロシュートの目が瞬時に昨日見せたあの目に切り替わりルイズが息を飲む。 (ヤバイ…!プロシュートのこの目はやると言ったら確実にやる目だわ…!それに間違いなく姫様が仕向けた刺客だと勘違いしてるし…!) この冷徹かつ殺意を持った目をしている時にこの国の王女であるアンリエッタの手を踏み付けたのだ。 次は躊躇無くこの刺客を殺し次に向かう目標がアンリエッタであろうことはルイズにも容易に想像できた。 だが羽帽子の男はその殺意の篭った視線に気付いたのか口を開いた。 「僕は敵じゃあない。姫殿下より君達に同行するように命じられた者で女王陛下直属魔法衛士隊、グリフォン隊隊長ワルド子爵だ」 だがそれを聞いたプロシュートは視線を合わせたまま警戒体勢を解こうとはしない。 「攻撃までしておきながらテメーが敵じゃあないと信じるマヌケが居ると思うか?悪りーが杖をこっちに投げでもしない限り敵として扱わせてもらう」 微塵も油断する隙すら見せないプロシュートに対して『やれやれだぜ』と言わんばかりに男が首を振った。 「すまない。婚約者が殴られようとしてるのをしているのを見て見ぬ振りはできなくてね。しかし…その用心深さは賞賛に値するよ」 味方と判別できない以上どちらか分からない者は敵として扱う。暗殺者として当然の行動だ。 だがプロシュートの頭に「婚約者だと?」と疑問が浮かんだがその答えはすぐ理解できた。 「ワルド様…!」 プロシュートに突き飛ばれて倒れていたルイズが震える声でそう言った。 「久しぶりだな、ルイズ! 僕のルイズ!」 ワルドは人懐っこい笑みを浮かべると、ルイズに駆け寄り、抱き上げる。 「お久しぶりでございます」 「相変わらず軽いなきみは!まるで羽のようだ!」 「……お恥ずかしいですわ」 「彼を紹介してくれたまえ。どうやらまだ信用されてないみたいだ」 ワルドがルイズを地面に下ろし、苦笑しながら帽子を目深に被ってそう言った。 「あ、あの……使い魔のプロシュートです」 ルイズがプロシュートを指差して言ったが当の本人は未だ警戒態勢を解いてはいない。 「きみがルイズの使い魔かい?……そうか、グラモン元帥の息子を決闘で打ち滅ぼした平民というのはきみの事だったのか」 「その事もあるがな…ルイズがオメーを信頼しててもオレがそのまま信用したと思わないでもらいてーな」 「ワルド様なら大丈夫よ…わたしが保証するから武器を収めてちょうだい…」 「俺の出番これd……」 頼み込むような顔で懇願してくるルイズを見てデルフリンガーを鞘に収める。もちろんグレイトフル・デッドは控えさせたままだ。 それを見たワルドが気さくな感じでプロシュートに近付いた。 「僕の婚約者がお世話になっているよ」 「………フン」 武器こそ収めたもののプロシュートの目は油断なくワルドを見ている。 「なるほど…その油断と隙の無さ。君があの『土くれのフーケ』を捕まえたという話も納得がいったよ」 そう言い放ち口笛を吹くと朝もやの中からグリフォンが飛んできた。 「さて…時間が惜しい、そろそろ出発するとしよう」 が、その時上空から羽音が聞こえ全員が上を向きルイズが驚いたように声を上げた。 「シルフィード!ってことはキュルケとタバサ!?」 地面に着陸したシルフィードからキュルケが降り立った。 「お待たせ」 それを見たルイズがキュルケに怒鳴る。 「何しにきたのよ!」 「あたしも昨日あそこに居たから話を聞いちゃってね一緒に行かないわけにもいかないし助けにきてあげたのよ」 タバサは何も知らずに寝ていたところを叩き起こされたため未だパジャマ姿でシルフィードの上で本を読んでいる。 ルイズが腕を組みキュルケと睨み合いを開始する。 ルイズを半ば無視する形でキュルケがワルドに迫るがそちらもほぼ相手にされていないようだ。 「馬はまだ慣れてねーからな、助かる」 それを尻目にプロシュートがタバサに礼を言いながら荷物をシルフィードの背中に乗せている。 フーケの事もありキュルケとタバサはそれなりに信用していいとは思うようになっていた。 「おいで、ルイズ」 ワルドがルイズを呼び抱きかかえたままグリフォンに乗り 「では諸君、出撃だ!」 グリフォンが駆け出したのを確認すると上空から三人の乗ったシルフィードが後を追っていく。 その光景を学院長室の窓から見ているのは昨日プロシュートに説教食らったばかりのアンリエッタだった。 プロシュートに左手を踏まれながら言われた言葉が心の奥底に引っかかっていた。 『生まれた時から平民を支配して当然と思っている』 実際そう思っている貴族がほとんどなため何一つ反論できなかったのだ。 「オールド・オスマン…彼は一体何者なのですか?」 実権を枢機卿が掌握しほぼ形骸と化しているが一国の王女に対して本気で怒りと殺意をぶつけてきた者がただの平民であるはずがないと思っていた。 「彼が言うにはハルケギニアではない別の世界から召喚されたと言っておりました」 「そのような世界があるのですか……?」 アンリエッタが遠くを見るような目になる。 プロシュートに踏まれた痛みがまだ残っているがそれを右手で押さえると小さな声で呟いた。 「『責任』と『覚悟』…ルイズ無事で…」 「さて…どうしたものかなこれは」 グリフォンとシルフィートを飛ばしてきたおかげでその日の夜中にラ・ロシェールの入り口に着いたのだが 峡谷を進んでいる所に襲撃を受け松明を投げ入れらていた。 「メイジが居ねーのなら次に飛んでくるのは弾ってのが順当なとこだな」 「なんでそんなに冷静なんだか…」 それに答えるかのように無数の矢がシルフィード目掛け飛来してくる。 キュルケは慌て気味だがタバサとプロシュートは何時もと変わらず冷静だった。 タバサが風の魔法で小型の竜巻を作りだし矢を弾きプロシュートが抜けてきた矢をグレイトフル・デッドで受け止める。 矢を受けた衝撃はフィードバックされるが傷にはならない。 「夜盗か…山賊の類か?」 「もしかしたら、アルビオン貴族の仕業かも……」 「貴族なら弓なぞ使わんだろう」 ワルドの呟きにルイズがはっとした声でその可能性を上げるが魔法が飛んでこない以上メイジは居ない事は確実だった。 「連中銃も2~3丁持ってやがるな」 「シルフィードを低空飛行させてたのが仇になったわね…」 矢なら風で弾き飛ばせるが単発式の旧式銃とはいえ弾丸なら風を突破して上空に上がろうとするシルフィードに届く可能性があった。 「崖の上から狙ってるから魔法も届かないわね…!」 「一着しかねーからやりたくなかったが…そうも言ってられねーようだな…」 デルフリンガーを引っつかんだプロシュートが崖の下に向かいものスゴイ速度で登り始める。 ルーンの効果で体が羽の如く軽くなっているのもあるがそれに加えグレイトフル・デッドの手で崖を掴み登っているため手を使わず飛ぶようにして登っているように見える。 矢がプロシュートを狙い飛んでくるがそれはワルドとタバサが風の魔法で全て撃ち落し銃弾は的が小さい上に連射できないで当たらない。 そして崖の上へ飛び乗り数秒すると 「タコス!」 「おっぱァアアーッ」 「ドゲェーーッ」 などの面白い叫びをあげながら弓と銃で狙っていた男達が崖を転がるようにして全て叩き落とし 崖の上から飛び降りるようにして降りてくるプロシュートが下に転がっていた男をクッション代わりにして着地した。 もちろん、降りる時もスタンドの手で適度にブレーキを掛けながらのため怪我は無い。……踏まれた方はそうでもなさそうに悶えているが。 「驚いたな…彼は平民なのだろう?崖から飛んだ時に落ちる速度が普通より遅かった気がしたが」 「兄貴ィ…そろそろ俺使って攻撃してくr…」 デルフリンガーを鞘に戻し崖から落ちてきた男達を半分蹴り飛ばしながら一箇所に集めワルドが杖を向け尋問を開始する。 「ただの物取りか…捨て置いてもいいだろう」 だが、その答えに納得いってないプロシュートが反論する。 「ただの物取りがグリフォンや竜に乗っていかにもメイジですって自己主張してるような 連中に仕掛けてくるわけねーだろうが。物を奪える相手を襲うから物取りって言うんだぜ?」 「だが彼らは物取りだとしか言わないが…何かいい手でもあるのかね?」 その言葉を後にして男達をルイズ達から見えない岩場に連れて行きしばらくすると… ズッタン!ズッズッタン! 「うんごおおおおおおおおおお!!!」 ズッタン!ズッズッタン! グイン!グイン! バッ!バッ! 「うんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 ズッタン!ズッズッタン…… 妙に軽快なリズム音と男達の悲痛な叫びがその場に流れてきた。 「白仮面とマントの男とナイフを土くれに変えた女に雇われただとよ」 言いながらプロシュートが岩陰から出てくる。 「その言葉信用していいのかい?適当な嘘でこちらを騙そうとしているかもしれないぞ?」 「人間死ぬよりヤバイ目にあった時は本当の事しか言えねーもんだ」 「ふむ…後ろにメイジが関わってくるとなるとこの先も襲撃されるかもしれないな。注意するとしよう。 とりあえず今日はラ・ロシェールに一泊して朝一番の便でアルビオンに向かうとしようじゃあないか」 ワルドがそう言いルイズを抱きかかえグリフォンに騎乗し街に向かう。 プロシュート達もシルフィードに乗りその後を追うが、その上でキュルケがどうやって男達を自白させたのか聞いてきた。 「なに、猿轡をして一人づつ順番にゆっくりと直に老化させていっただけだ 全力でやるとすぐに気絶しちまうが、加減しながらやれば自分がどうなっているか理解しながら老化していくからな」 ゆっくりとは言っても通常ありえない速度で自らが老化していくのである。 老化している物が若いのならなおさらだ。肉体にダメージを与える拷問より余程効果的といえる。 「敵には容赦しないのね……でもそこが素敵!」 「危険」 シルフィードの上でキュルケがプロシュートに抱き付こうとするがさすがに危ないと思ったのかタバサが突っ込んだ。 アンリエッタの手紙取り戻し隊 ― ヤバイ『ラ・ロシェールに』IN! ←To be continued 戻る< 目次 続く
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/854.html
・お熱い使い魔(キッス)を受け取りなッ! ゴッ 「「~~~ッッ!!!!」」 頭部に走った余りの激痛に二人してのた打ち回る。 周囲が笑いの渦に飲まれていたが二人ともそんな事気にしては居られない。そして見事に同じ事を考えていた。 (何だこの石頭はッッ!!!!) 腕を組みいかにも威厳たっぷりに此方を見下ろすピンク頭。 「で!あんた一体誰?!」 しかしその額は心なしか少し赤く腫れ上がっている気がしないでも無い。威厳はその腫れで帳消しになっており…どちらかと言えばマヌケだ。 恐らく明日には青くなっているだろう。 「…エルメェス…エルメェス・コステロだ」 取りあえず名前を答えておく。 …ん? 「エルメェス?変な名前」 私の名前は『それ』だったか? もう!もう!!何なのよこいつは!!! いきなり頭突きしたり私を無視して俯いたり! 何よ何よ変な髪型! 「ミスタコルベール!やり直しを!やり直しを要求します!!」 こんなの冗談じゃない 「流石はゼロのルイズ!」 「また失敗かよ!」 「平民だ!平民を召還しやがった!!」 うっせ―黙らっしゃいこのピザが 取りあえずマルコメヌは 「ピギィ!」 蹴っておいた 「ミスタコルベール!やり直しを!!」 全く冗談じゃ無いわよ マルコリヌうっさいのた打ち回らないで 「ミスヴァリエール、それは無理だ。 呼び出してしまった以上ゥ君の使い魔は彼女…?だ。残念ながらやり直しは出来ないのだよ。」 「糞ったれこのコッパゲが残りの毛全部むしってやろうか」 (そんな…ミスタコルベールあんまりです) 「「…」」 間違ったァ――!言ってることと思っている事が逆でしたァ―!! コホン… 「さ、さぁさっさと儀式の続きをを」 多少口元がひくついてるけど大丈夫でしょ 大丈夫大丈夫もーまんたい のた打ち回らないでってばマルコリヌ 何?股間?股間が痛いの?見苦しい見苦しい見苦しい三回言った ちらと後ろに目を向けるとまだ地面に座り込んでいる平民が居た。 性別は恐らく…女?厳つい顔をしている。 後、変な髪型。それに石頭。更に石頭。石頭。 ちょっと!何で私より胸があるっていうのよ!舐めてるわね!?クソッ!クソッ! と、言うかさっきから微動だにしないんだが大丈夫なのかしら まさかさっきの頭突きで色々吹っ飛んだなんて事無いでしょうね 「ねぇちょっとあんた一体どこの平民?頭(の中とか)大丈夫?」 「えっあっああ…うん大丈夫だ」 何よ周りをキョロキョロ見回して そっか平民だからこんなの見慣れてないのね それにしても…ああ、さようならルイズのファーストキッス せめて男が良かったわ 見た目男っぽいけど 行くのよルイズ!がんばっ!ルイズ! 平民の額(あ、赤くなってるわザマーミロ)に杖を向け呪文を唱える 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。 五つの力を司るペンタゴン。 この者に祝福を与え 我が使い魔となせ。」 そしてそのまま顔を近づけぇ――― ドカッ! 「まそっぷ!」 後ろに吹っ飛ばされた 「なっ何をするだぁ―!!痛いじゃないの!」 「それはこっちのセリフだボケが!」 平民の癖に口答えするわけ!?頭に来た! 「ファイヤーボール!」 チュドーン! よっしゃ当たった!この際ファイヤーボールが失敗したとかどうでも良いわ 気絶した隙に契約する!なんて頭がいいの私! ズキュ――z___ン!! 契約完了 to be continued…-
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1950.html
11話 校庭に突然現れた巨大ゴーレム。 全長30メイルはあろうかというその巨体の肩には、一人の女が立っている。 この女――フーケは、ほんの数秒前まで校庭の物陰に隠れて盗みの算段を立てていた。 なのにその物陰から出てきたのは、予想もしなかった好機がフーケに訪れたからに他ならない。 その好機とは、宝物庫の外壁に突然出来た無数の亀裂。 ホワイトスネイクの手によって逃れようの無い死に追いやられたラング・ラングラーの死に際の攻撃 ――ジャンピン・ジャック・フラッシュの鉄クズの砲撃によるものだ。 自分では傷一つ付けられないだろうと見積もっていた宝物庫の外壁。 それを突然現れた男が、恐らくは狙ってやったことではないのだろうが、容易く損傷させてしまったのだ。 勿論フーケは驚いた。 だが名うての盗賊として養った判断力が、これが逃さざるべきチャンスであるとすぐに知らせた。 そしてすぐにルーンを唱え、魔法を完成させ、ゴーレムを作り出したのだった。 「・・・・・・何ダ、アレハ?」 ラングラーとの戦いで満身創痍になったホワイトスネイクが呟く。 スタンド使いとの戦歴20年にも及ぶホワイトスネイクにとって、未知なる敵と戦う事は日常茶飯事である。 しかしこれほどまでに巨大で、そして圧倒的なパワーを感じさせる敵と遭遇したのは、これが初めてであった。 「あれは・・・ゴーレムよ」 ホワイトスネイクの呟きに、その近くにいたモンモランシーが答える。 「ゴーレム?」 「土のメイジが作る人形みたいなものよ」 「人形・・・トナルト、ギーシュガ作ッテイタ『ワルキューレ』トヤラと同列ノモノカ?」 「ええ」 「ダガアマリニモ大キ過ギルゾ」 「分かってるわよ、そんなこと! あのサイズ・・・わたしは土のメイジじゃないからよく分かんないけど、ドットやラインじゃきっと無理よ。 少なく見積もっても20、30メイルはあるんだから・・・」 「最低デモ、『トライアングル』ダト?」 「そういうことになるわ。どっちみちわたしたちじゃ無理ね・・・あんたもボロボロだし。 どこかに隠れてる方がよさそうね」 そう言ってモンモランシーは怯えた目でゴーレムを見上げる。 「肩ニ人ガ乗ッテルゾ。アレガ操作シテイルノカ?」 ゴーレムの肩の上に立つ人影を目ざとく見つけたホワイトスネイク。 「乗ってるの? わたしには見えないわよ」 「人間ノ視力デハ無理カ」 「しょうがないじゃない。あんたみたいな化け物じゃないんだもの」 「『化け物』ジャアナイ。『スタンド』ダ」 「どっちにしたって一緒よ。わたしみたいな人間からすれば、あんたは化け物に変わり無いわ」 「『感情的な人間』カラスレバ、カ」 「何ですって!?」 唐突に二人の間の空気が悪くなる。 そのとき―― 「ばばぶばびべぶべ! びびば! びびばぶばぶ!」 未だに水から出してもらえずにいたギーシュが激しく喚きだした。 「あ・・・・・・」 「オ嬢サンガ黙ラセタママデ放ッタラカシニシテオクカラ、今ニモ息ガ止マリソウダナ」 「う、うるさいわよ! あとお嬢さんとか呼ばないで!」 ホワイトスネイクに文句を言いながら、モンモランシーがギーシュに使った水の魔法を解除する。 その途端にギーシュを包んでいた水の塊が、ざばぁっと音を立てて落ちた。 「ゲ、ゲホッゲホ、ッ・・・た、助かったよ、モンモランシー」 「お礼なんていいから! さっさと逃げるわよ、ギーシュ!」 「そ、そうだね・・・ドットの僕じゃあ、あんな馬鹿でかいゴーレムはどうしようもないし・・・」 「そうよ! だから早く隠れるなり何なり――」 「だが断る」 「・・・はぁ?」 ギーシュが言い出したことの意味が分からず、唖然とするモンモランシー。 「このギーシュ・ド・グラモンが最も好むことの一つは、悪党から逃げるという提案に対してNO! と言ってやることだ・・・」 そう言っておもむろにバラの造花、もとい自身の杖を取り出すギーシュ。 そしてルーンを唱えようとしたところで―― ドシュン! どこからともなく飛んできたDISKがギーシュの額に刺さった。 そして差し込まれたDISKは、ギーシュが自分に何が起きているかを理解するよりも早く彼を昏倒させる。 「『命令』スル。1時間寝テイロ」 言うまでも無く、DISKを投げたのはホワイトスネイクである。 「ちょ、ちょっとあんた、ギーシュに一体何したのよ!」 「今カラ1時間寝ルダケダカラ気ニシナクテイイ。ソレヨリ・・・声ヲ出スナ。物音ヲ立テルナ」 そう言ってホワイトスネイクは自分の残り少ないスタンドパワーを、体の底から引きずり出す。 「ソシテ・・・コノ場カラ動クナ」 引き出したスタンドパワーを自分の周囲、半径10数メイルに集中。 そして「能力」を発動する。 まるでそこに誰もいないかのように、風が何者にも遮られずに吹き抜けているかのように。 偽装し、欺き、隠蔽する。 これがホワイトスネイクの能力、その3つ目の「幻覚」だ。 幻覚の対象を見た者の脳そのものに干渉し、 見たもの、嗅いだもの、聞いたもの・・・あらゆるものがホワイトスネイクが望んだものになる。 使いようによっては、記憶を奪い去ることよりも凶悪な能力だ。 ゴーレムの足が、ホワイトスネイクたちがいる場所から20メイルの位置に踏み込む。 ズシン、と地響きが立つ。 人影が立っている場所からなら、すぐにでもホワイトスネイクたちを発見できる状況だ。 人間のモンモランシーでさえ、ゴーレムの肩の上で、月明かりが人型に切り取られているのが分かるのだから。 モンモランシーがごくり、と唾を飲む。 どうか見つかりませんように。 そう願った瞬間、人影が頭をこちらに向けた。 思わず悲鳴を上げそうになるモンモランシー。 その口をホワイトスネイクの、ボロボロの手が塞ぐ。 「モ・・・モガ・・・」 「声ヲ出スナ・・・今ノ私ノパワーデハ・・・声マデモ誤魔化スコトハデキナイ」 塞がれた口でもごもご言いながらモンモランシーが抗議する。 人影はまだこちらに頭を向けている。 だが次の瞬間、人影は何も見なかったかのようにこちらから目をそらした。 それに従うようにゴーレムもまた一歩、地響きを立てながら踏み込んだ。 「見つから・・・なかったの? 思いっきりこっちを見てたのに・・・」 「ソウナルヨウニ私ガシタカラダ」 驚きを隠さないモンモランシーに対し、ホワイトスネイクは淡々と答える。 そうこうしている間にゴーレムは学院の校舎へと辿り着いた。 そしてその太い腕を振り上げると、宝物庫の外壁の、幾つものひびが入った部分に振り下ろす。 ドゴオオオォン! 学院中に響き渡る大きな音と振動を伴って、宝物庫の壁に大穴が開いた。 そして壁をぶち破ったゴーレムの腕の上を人影が素早く走り抜け、校舎に侵入する。 (ナルホド・・・アアシテ盗ミヲヤルノカ。 巨大ナゴーレムハ周囲ノ人間ヲ恐レサセ、ソノ場カラ退避サセル。 ツマリ現場ハガラ空キニナル。 ソコヲ狙ウ・・・トイウワケカ。 随分大胆ナ手口ダ。 ソノ場ニゴーレムヲ恐レナイヨウナ気骨アル者ガイレバ、自分モ危険ニナルノニナ・・・) その光景を見ながら、ホワイトスネイクが思考を巡らす。 やがて、人影が校舎に開いた大穴から出てきた。 その手には大きな黒い箱が抱えられている。 そして人影がゴーレムの掌の上に乗ると、ゴーレムはゆっくりとその巨体を動かし、 ズシン、ズシン、と地響きを立てながら去っていった。 ゴーレムも、人影も、最後までホワイトスネイクたちがそこにいたことには気づかなかった 「っはぁ~~、助かった・・・。」 それを見送って、モンモランシーが声を上げる。 ホワイトスネイクはゴーレムが十分に離れたのを見計らって、地面に横たわっているルイズを揺り動かす。 「マスター、起キロ」 「う、うん・・・・・・ッ! ほ、ホワイトスネイク! キュルケと青髪の子は!?」 意識を取り戻したルイズは、すぐにキュルケたちのことを口にする。 「重傷ヲ負ッテハイルガ、命ニ別状ハ無イ。ラング・ラングラーモ始末シタ」 「そう・・・よかった・・・・・・って、あの不届き者、殺したの!?」 「ソウダ。ソコニ奴ノ死体ガ転ガッテイル」 「・・・そう」 自分の使い魔が人間を殺したという事実を受け止めるルイズ。 そして自分の使い魔がした事を確かめるために、ホワイトスネイクが指し示した方向を見る。 「ッ!!」 凄惨な光景だった。 全身の血を一滴残らず周囲に撒き散らし、さらに全身が押しつぶされたかのようにベコベコになっているラングラーの死体。 そんなホラー映画顔負けのショッキング映像に加え、 ラングラーの血が自分にも降りかかっているのが分かった時には吐き気がこみ上げたが、 幸いにも消化しかけの物をゲロすることはなかった。 この一週間、ホワイトスネイクとのイザコザのために食欲が無かったのが功を奏したらしい。 「・・・あんた、一体何やったのよ?」 やっとのことで、喉から一言搾り出したルイズ。 「『ラングラーの体内気圧を限界まで低下させた』・・・トイウノガ私ノシタコトダガ、 ソレデハ分カラナイダロウカラ気ニシナクテイイ」 「気にするわよ。 ご主人様には使い魔がした事を知る権利があるわ」 「説明シタッテ分カルモンジャアナイシ、ソレニスル時間ナド無イ」 「何よそれ!」 むぅ~~、と唸るルイズ。 それを見て、これはまた険悪になるかな、と思ったホワイトスネイクは、 「起コスカ?」 キュルケとタバサを指し示してそう言った。 「バカ言わないでよ。重傷負ってるんなら起こしちゃダメに決まってるじゃない」 「分カッタ」 ホワイトスネイクは淡白に答える。 そしてそう言って周囲を見回したルイズは―― 「ちょっ、モンモランシー! あんた、何でここにいるのよ!?」 「それはこっちにセリフよ、ルイズ! ギーシュと二人っきりで歩いてたらいきなり変な奴と一緒に壁を突き破って出てきて、それにそれだけじゃないわ! あんたの使い魔、さっき言った奴と殺し合いまでしたんだから! わたし、心臓が飛び出るかと思ったわよ! ギーシュもギーシュであんたの使い魔のことを『あれは騎士だ!』とか訳分かんないこと言って興奮してたし・・・」 「え、ちょっとまって。ギーシュもいるの? あんた浮気されたから絶交だとか何とか言ってたじゃないの」 「一週間も経ったんだから許してあげてもいいかなーって思ったのよ! 別にいいじゃないの! わたしとギーシュの問題なんだから!」 「まあ、それはそうだけど・・・」 少々ヤケクソ気味のモンモランシーの剣幕に押されるルイズ。 ちなみに会話の当事者であるギーシュはまだおねんねの最中だ。 と、そうこうしてるうちに、ルイズはホワイトスネイクに、ものの見事に話をすり替えられたことに気づいた。 「ホワイトスネイク! あんたまだわたしが聞いたことに答えてないわよ!」 「ダカラサッキモ言ッタロウ。私ニハソレヲ説明スル時間ナドナイ」 「何でよ!」 「ラングラートノ戦イノ前ニ言ッタハズダ。 例エ生キ延ビタトシテモ、ソノ後自分デ自分ニ決着ヲ付ケルト」 それを聞いて、ルイズが固まった。 「何・・・ですって?」 「聞コエナカッタノカ? ツマリ私ハコウ言ッテイルノダ。『今から自決する』・・・トナ」 さも当然のように言うホワイトスネイク。 それを見て、ルイズは全部思い出した。 自分を主人と呼びながらも、自分がそれに足らない存在だと見なすかのような態度。 自分よりも優れた判断が出来るとでも言わんばかりの態度。 自分を、主人だと認めていない態度。 忘れていた怒りが、マグマのようにグツグツ煮えたぎった。 そして―― 「・・・の・・・・・・」 「・・・何ダ?」 「・・・・・・この・・・・・・」 プッツンした。 「このバカ蛇ぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」 そう叫ぶが速いが杖を振り上げ、一切の迷い無くホワイトスネイクに向けて振り下ろすッ! ドゴォォォォォン! 「ハグッ!」 至近距離でのルイズの失敗魔法の爆発が、ホワイトスネイクを吹っ飛ばすッ! ルイズ自身も今の爆発で後ろに吹っ飛ばされたが、すぐに起き上がってホワイトスネイクの方へ走る。 「そこをおおおおおお!! 動くなあああああああああ!!」 「何ダトォーーーーーーーーーーーッ!?」 突然ブチ切れた主人の暴挙に激しく混乱しながらホワイトスネイクが悲鳴を上げる。 そしてッ! メメタァッ!! 「ブゲアッ!!」 ルイズの100点満点の飛び蹴りがホワイトスネイクの顔面に炸裂したッ! さらにその蹴りの勢いでホワイトスネイクは3回半ほど後ろ回りをした挙句、校舎の外壁にごつんと後頭部を打ち付けた。 「グオォォッ・・・」 激痛でしゃがみこむホワイトスネイク。 ラングラーとの激戦、さらには限界状態での幻覚の使用。 それら能力と体力の酷使とご主人様の乱行とでホワイトスネイクはヘトヘトに弱りきっていた だがそんな彼に対しても、桃色髪の阿修羅は容赦しなかった。 当然モンモランシーもその光景を見ていたが、ルイズのあまりの凄まじさに何も言えなかった。 阿修羅――もといルイズは、そんな満身創痍を軽く通り越した状態のホワイトスネイクにおもむろに近づくと―― ドグシャアッ! 「ア・・・足ノ・・・小指・・・ヲ!」 口をぱくぱくさせながらホワイトスネイクが頭から崩れ落ちた。 足の小指を全力で、しかも革靴履いた足のかかとで踏みつけられたのだ。 痛いとかどうとかのレベルを超越している。 「この・・・この大バカッ!」 地面に突っ伏して呻いているホワイトスネイクにルイズが罵声を浴びせる。 「そもそも何なのよあんたは! サモン・サーヴァントで出てきてからご主人様差し置いて好き放題じゃないの! 決闘じゃギーシュを殺しかけるし! 自分がスタンドだからとか何とか言って訳分かんないこと言うし! それに、それに自分から死ぬなんて言うし!! あの不届き者と戦ってる時、だって、凄く心配してたのに! わたしがバカみたいじゃないの!! わたしが、わたしがどんだけ、あんたの事を心配したのか分かってるの!?」 ホワイトスネイクは倒れたままの状態でルイズの言葉を聞く。 ホワイトスネイクの今の体勢からではルイズの顔は見えなかったが、ちゃんと分かった。 言葉が途中から切れ切れになり、声が涙混じりになったのも、ホワイトスネイクには分かった。 そしてそれらの言葉の中の一つの単語が、ホワイトスネイクの胸中に響いた。 心配。 スタンド本体の力そのものであるスタンドたるホワイトスネイクにとって、それは全く縁の無い言葉だった。 とはいえ、言葉の意味を知らないわけではない。 しかし、その言葉が自分に対して矢印を向けていると言う事実に、ホワイトスネイクは驚いていた。 「マスター」 「・・・なによ」 ぐすっと鼻水をすすってルイズが答える。 「マスターハ・・・私ヲ心配シタノカ?」 そうホワイトスネイクが言うや否や―― ドグシャアッ!! 「フベッ!」 ホワイトスネイクの無防備な後頭部をルイズが容赦なく踏みつけた。 「当たり前じゃないのこのバカ蛇!! さっきから! さっきから何回もそう言ってるじゃないの!!」 後頭部の痛みを痛烈に感じ、そしてルイズの言葉を聞きながら、ホワイトスネイクは思った。 何てこった、と。 ここでは自分はスタンドとしては扱われないらしい。 自分が全存在を懸けて返済しようとした命令無視のツケの領収書を、この小娘はあっさりと突き返した。 さも当然、と言わんばかりに。 しかもそればかりじゃあない。 自分の力そのものであるスタンド――本体とまさしく一心同体であるものとは、まるで違う存在であるかのように、 あたかも他人に対するかのように心配などしてきたのだ。 自分をスタンドとして扱う気など、毛頭無いらしい。 今までの20年で積んで来たスタンドとしての立ち振る舞いの、その大半が一瞬で無用の長物になったように思えた。 何てこった。 こんなバカな話があるものか。 せっかく本体とのダメージ共有も無い分、よりスタンドらしく振舞えるものと思っていたのに。 何てこった。 これでは―― ――これでは、今はまだ死ねないではないか。 ホワイトスネイクはおもむろに起き上がった。 そして、ルイズと向き合う。 自分を一方的にボコボコにしたご主人様は、目に涙を溜めていた。 それを見て、改めてホワイトスネイクは思う。 やっぱり、まだ自分は死ねない。 こんな前途多難なスタンド本体――もとい、ご主人様を守ることなど、自分以外では難しすぎる。 他の者には到底任せられない。 そして、口を開く。 「・・・トリアエズ、謝罪ハシテオク」 「・・・とりあえず、って何よ」 尖った口調でルイズが返す。 「言イ訳ハ趣味ジャアナイガ、謝ルヨリ先ニスルコトガアルノダ」 「・・・何よ」 「コッチノ世界ニ、対応スルコトダ」 「・・・は?」 ホワイトスネイクの言ったことの意味が分からず、聞き返すルイズ。 「私ハコレデモ20年生キテイルガ、ソノ20年分ノ経験デハコノ世界ニハ到底対応デキナイ。 ツマリ・・・コッチノ世界ニ合ワセタ立チ振ル舞イヲ早急ニスル必要ガアル」 「だからどういうことよ!」 「ソウダナ、マズハ自分ニ自分デ決着ヲツケル・・・トイウノヲ撤回スルカ」 「・・・・・・本当に?」 疑いの強い目つきでルイズがホワイトスネイクを睨む。 「・・・本当ダ」 それを真っ直ぐに見返して、ホワイトスネイクが返す。 「本当に本当ね?」 「・・・本当ニ、本当ダ」 「だったら3つ約束して」 「何故ダ?」 「あんたがウソ言って無いんだったら、今からわたしが3つ言うことに約束して。いいわね?」 「・・・マアイイガ、何ヲダ?」 怪訝な顔をして聞くホワイトスネイクに、ルイズは真剣な顔で答える。 「1つ! わたしの言う事は最大限聞くこと! 2つ! わたしの身を守るのは、ほんとうにどうしようもない時だけ! 3つ! ・・・」 「・・・3ツ目ハ何ダ?」 「・・・わたしのことはルイズ、って呼びなさい」 「・・・マスター、ジャダメナノカ?」 「ダメ」 「何故ダ?」 「なんでもいいから! わたしにはルイズって立派な名前があるの! だからあんたもそれで呼びなさいってことよ!」 「マア・・・ソウイウコトニシテオクカ」 「何よその言い方! 文句あんの?」 「イヤ無イ。無イカラ、無イカラ私ヲ踏ンヅケヨウトスルンジャアナイッ!」 「いーや、踏んづけるわ。何だかよく分かんないけどまた腹立ってきたもの。覚悟しなさい」 「タカガ一週間ポッチノコトダローガッ! 私ハ体力的ニソロソロ危ウインダ! コレ以上ダメージハ受ケレンッ! ダカラヤメロト言ッテ・・・」 メメタァッ! 「ギャアァッ!」 結局ホワイトスネイクは踏まれた。 さっきと同じ足の小指を、さっきよりも強く。 そして、恐るべきジャンピン・ジャック・フラッシュと死闘を演じた強力なスタンドには不似合いな、情け無い悲鳴を上げたのであった。 しかし、この悲鳴・・・ひょっとしたら、産声なのかもしれない。 ルイズとホワイトスネイクの、「スタンド本体」と「スタンド」の関係ならぬ、「ご主人様」と「使い魔」の関係の。 ギーシュ:駆けつけた教師たちによって医務室に運ばれるが、 ケガ一つして無い上にすぐに目を覚ましたので自室へ戻った。 モンモランシー:ギーシュに付き添って医務室へ。 やはり何の問題もなかったギーシュにちょっぴり涙ぐみながら自室に戻る。 キュルケ:重傷。駆けつけた教師達によって医務室に運ばれる。 タバサ:重傷。駆けつけた教師達によって医務室に運ばれる。 オールド・オスマン:ルイズの部屋にラング・ラングラーが侵入した事件、そしてフーケ事件の処理で突如多忙になる。 こんな時に限ってミス・ロングビルがいないことを恨めしく思った。 ミス・ロングビル:現在地不明。魔法学院にはいないようだ。 ルイズ:軽症。医務室で水魔法の治療を受けてから自室に戻った。 ホワイトスネイク:重傷。発現状態を保つのもキツくなったので、ルイズの中に戻った。 ・ ・ ・ そして・・・ (ソーイエバ、ラングラーカラ記憶ト『ジャンピン・ジャック・フラッシュ』ノスタンドヲ抜イテオイタノヲ ルイズニ言ッテイナイ気ガスルガ・・・マア、イイカ) 何日後か、何週間後かは分からないが、ルイズから一発蹴りを貰うことが決定したホワイトスネイクであった。 ラング・ラングラー:死亡。スタンドと記憶はホワイトスネイクの手に。 To Be Continued...
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/2088.html
わたしは自分の部屋で今日一日の読んだ本を思い出す。 詩の本、歴史の本、先住魔法の本、魔法の本・・・などなど。 あと、『虚無』について片っ端から本を読み漁った。 だが虚無の手掛りは全く見付らなかった。 伊達に失われた系統と呼ばれてないわね。 王宮の蔵書なら、もしかして・・・ いや、その可能性は低い。 もし虚無に関する事があれば間違いなくワルドが言ってた筈だから。 あの男、裏切り者だが聖地を・・・虚無を求める姿勢には『嘘』が無かった。 だとすると、虚無を知るための一番の手掛りは・・・デルフリンガー! 「ねえデルフリンガー」 「なんだ貴族の娘っ子」 「あなたはガンダールヴの左手だったのよね」 「あん、そうだっけ?」 …落ち着け・・・あせるな・・・ゆっくりと確実に。 「あんた、アルビオンでそう言ってたのよ」 「ああ、んで・・・それがどうかしたか?」 「じゃあ虚無について何か知らない?」 「んー、忘れた。俺は忘れっぽいんだぜ」 「でも思い出したとか言ってたじゃない!」 「あれな。あれは相棒に振られると、なんか懐かしくなって色々と思い出すんだよ」 色々ね・・・ 「そうだ!貴族の娘っ子。新しく使い魔を召喚しねー?新しい相棒に振るわれると また何か思い出すかもしんねーし」 「何言ってんのよ!そんな事できるわけ無いじゃない」 「なんでだ?」 不思議そうに聞かないでよ。 「プロシュートは命懸けで、わたしを守ってくれた。わたしは自分の名前を、そして 彼の名前をハルケギニア全土に轟かせてやると貴族のプライドに懸けて 誓ったのよ。他でもない、このわたしが!」 わたしの使い魔はプロシュートだけよ、だから新しく使い魔は召喚しない。 「わかったよ、もう言わねーよ」 だけど、デルフリンガーの記憶も手に入れたい・・・ 「・・・剣なら、わたしが振ってあげるわよ」 「貴族の娘っ子が?」 夜、誰も居ないことを確認して中庭でデルフリンガーを抜いた。 「本気でやるのかよ」 「もちろん・・・くうっ」 わたしはデルフリンガーを上段に構えた・・・重い・・・。 「うりゃっ」 掛け声と共にデルフリンガーを一気に振り下ろす。 勢いをつけ過ぎた為に止められずデルフリンガーを地面に叩きつけてしまった。 「どう、デルフリンガー。なにか思い出した?」 「・・・懐かしいどころか新鮮な気持ちで一杯だよ」 「うう、だめか・・・」 知識だけじゃなく、体も鍛えなきゃならないようね。
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1898.html
ギーシュ・ド・グラモンの朝は爽やかに始まる。 誰に起こされる訳でも無くすっきりと目覚め、彼が溺愛する使い魔に朝の挨拶と抱擁を与えてから 清潔感漂う(正し少しばかり趣味が悪い)白の制服に袖を通して、自分の身体に特別違和感の無い事を確認する。 正直一昨日はどうなる事かと思ったけど、まあそこは僕だし どんな逆境へ追い込まれようと平民に返り討ちにされたと揶揄されようと、華麗に立ち直るのが僕のいい所さ。 調子は悪くない。毟ろ少しばかりの空腹感が健康を感じさせる。 実家に泣き付いて取り寄せた高価な回復薬だけではない、 僕に劣らず優秀な水属性のメイジ、モンモランシーによる献身的な看病のお陰だろう。 こればっかりは、僕の日頃の行いの賜って奴だな。フフ、人徳人徳ゥ! 朝食を食いに行く前にまず身嗜みを整えようと洗面台の前に立ち、ヘアブラシに手が伸びた所で全身が硬直した。 鏡に映る人影は二つ。 振り返る、誰もいない。 再び鏡を見る。先ほどより少し接近した男は、忘れもしない一昨日の『平民』の―――― 目が合うと、鏡の男はニヤッと笑った。 「っぎゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁヒィッ」 ルイズはいい加減激昂していた。 昨日自分がちょっとカッとなったばかりに、イルーゾォは結局丸半日寝込むハメになってしまって、 それについては素直に謝罪してもいい、と思っていた。 それだけでは無い。 どうやら『魔法』を知らないらしい彼に詳しい説明を聞かせてやろうとも思っていたし、 粗末な食事(もっとも、イルーゾォはそれを見た事すら無いが)も改めるつもりだった。 それに、彼は「『尊敬』出来ない奴の為に働く気は無い」と言った。今までは『使い魔は私のために働く』のが当然と思っていたけれど、 ああも真直ぐに主張されてはね除けられる程、私は自分に自信が無い。 『尊敬』に足る人物になりたい。その為に、『今の私』を知って貰うのが誠意だと思った。 『ゼロ』とは何か、打ち明ける気でいた。 まあそれでご推察の通り、意を決して訪れた医務室はもぬけの殻だった訳で。 「あァァの野良使い魔ァ!今度こそ絶対、絶ッッッ対取っ捕まえてやるんだk 「ダーリン!お見舞いに来・・・・あれ?」 私の心の叫びを遮る声の主は、ドアを勢い良く開け医務室に飛び込んできた見るからに健康そうな女性。 まあキュルケさん、ごきげんよう、何か御用ですか?つーかダーリンって何ぞ。 「・・・・ダーリンは?」 「ダーリンは知らないけどイルーゾォは逃げたわ」 「(イルーゾォって言うのね?変わった名前)もう、何してるの!自分の使い魔ならちゃんと見張ってなさい。ずっと居られたら邪魔だけど」 「何か言った?!」 キュルケは意外とあっさり引き下がって、脇にいるタバサ(静かにしてただけで、ちゃんと居たのよ)に向かって ねえ~一緒に探すの手伝ってくれるう?と語尾をだらしなく延ばして頼んでいる。 タバサがチラッとこっちを見た。 ――――『頼むべき。口だけ。協力する』 あの名前も知らないメイドを除けば、逃げ出したイルーゾォを見たのはキュルケだけだった。 どうやら捕まえようとしていたらしいし、食堂でタバサが彼に気づいたのも『キュルケの手鏡』を見たせいだ。 私が意地を張らなければ・・・・ ・・・・ううん、違う。1人よりも3人の方がいい、それだけよ! 一つ息を呑んで、心を決めて。歩き出す二つの背中に声をかけた。 「きゅ、キュルケがイルーゾォを探すっていうんなら、協力してあげてもいいわ!」 「何言ってるのよ、貴方の使い魔でしょう。」 「協力するのは私たち・・・・」 キュルケとタバサは、顔だけ振り返って私を迎える。 「何処から探す?」 世界が少し広がった、気がした。 こんなに天気がいいんだからとりあえず中庭を探そう、というキュルケの提案を半ば直感で却下して(天日に当てたら溶けかねない) 室内を重点的に探す事で話がまとまった。 イルーゾォは私の知らないうちにあのメイドに懐いていたから、まずは厨房だ。 「イルーゾォさんですか?はい、今朝いらっしゃいましたよ。」 屈託のない絵顔で私を迎えるメイド(キュルケが小さい声で「勝った!」って言ってたけど私には何の事だかさっぱり!)は、 やはり頻繁にイルーゾォと会っているらしい。というか、餌付けしているらしい。 一瞬帰ってこないのは彼女のせいじゃあ?と思ったけれど、使い魔の世話をして貰っておいてそれは筋違いだと思い直す。 「何処へ行ったか判らない?」 「あの・・・・申しあげにくいのですが。」 メイドはたっぷり逡巡した後、申し訳なさ気な表情で私を見下ろして、小さく「『暫くアイツの来ないところへ』・・・・と。」 ・・・・どうせ小さく言うなら、キュルケ達に聞こえないようにして欲しかった。 「あの、乱暴はやめてあげてください。」 「確約は出来ないッ・・・・!」 自分はギーシュのワルキューレと真正面から戦ったくせに、こんなか弱い女の子捕まえて何言ったのよう! 「むぐう!ん゛――――――!ん゛――――――!!」 「五月蝿いな騒ぐなよ!どうせ誰にも聞こえやしないんだ」 見えない掌に顔面を掴まれる感触のすぐ後に、まるで水面に沈むように鏡の中に引き入れられた。 目の前には昨日の平民、爽やかな朝は一転パニック日和。この感覚は初めてじゃあない、一昨日体験したばかりで 『見えない力』を感じたすぐ後に周囲の雰囲気ががらりと変わるのも、やはり同じだった。 唯一違うのは、頭を掴んだ掌が離れる事なく、(一昨日はサッと離れて、次いで背後から衝撃が降って来た) そのまま僕の口を塞ぎ、がっしり掴んで離さない事だ。 「落ち着けって」 無茶言うな!見えない相手に殴られるのがどれほど恐いかわかるかい?! ・・・・あれ?わかるかな。良く考えれば、多分こいつの魔法だよ。これ。 何故平民が魔法を使えるのかは知らないけれど(そもそも平民が『使い魔』になる時点で意味がわからない) もがく僕を面白くも無さそうに見ているこいつが原因って事でまず間違い無いだろう。 「・・・・むぐぅ」 「よし、気が済んだか?」 僕が抵抗をやめると、案外すんなりと『見えない力』は離れて、それきり何もしてこない。 景色全体に薄く灰色をまぶしたような死んだ雰囲気の部屋は、しかし確かに僕のものだ。 左右が綺麗に反転されているせいで違和感が付きまとうが、部屋中に僕の私物が溢れている。 ヴェストリ広場もそうだった。急に薄ら寒くなって、ギャラリーが消失し僕一人取り残される。 「ぼ、僕の部屋に何をした?!」 「『お前に』何かしたんだ。『引き入れた』んだよ、見えなかったのか?」 引き入れる。そう、僕は洗面台の鏡に頭から突っ込んだ。産まれて初めての体験だ。 振り返ると僕が引きずり込まれた鏡があり、そのむこうにはやはり洗面所が映り・・・・『僕と平民が映っていない』?! 「ど、どういう事なんだよこれはッ」 何か起こっている!けど、これがどんな魔法なのか、何のためなのか、一つもわからないじゃないか! 「五月蠅いな、騒ぐなって言うんだ・・・・おい」 「な、何さ」 「『マジで見えない』のか?」 平民は僕の目の前でふわふわと手を振って見せた後、人差し指だけ突き出して、つんと一度空振りさせる。 「だから何が・・・・あだっ」 額を小突かれた。まただ!また見えない攻撃が―――― 「マジだ・・・・」 おい平民!何驚いたような顔で見てるんだよ!一体何がしたいんだよッ!!
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1753.html
ジョセフ達は一路ニューカッスルへと向かうことになった。 鋸の歯のようなアルビオンの海岸線に沿い、なおかつ雲に隠れての航海だというのに、その身を隠したイーグル号は全く危なげなく進んでいくことにジョセフは感心した。 やがて三時間ほど経つと、大陸から大きく突き出た岬が見え、その突端には高く立派な城が聳えていた。 「あれがニューカッスル城ですかな」 「その通り。あれが我がアルビオン王国最後の城砦、ニューカッスル城だ」 後甲板で空に浮かぶ光景を眺めていたジョセフの質問に、大使一行と世間話に興じていたウェールズが答える。 ちなみにウェールズに言い寄ったキュルケは、『私には心に決めた人がいる』とあっさり断わられたので再びジョセフに接近し、ルイズの怒りを煽ったのは言うまでも無い。 だがイーグル号はまっすぐニューカッスル城に向かわず、再び雲に隠れるように大陸の下側に潜り込んで行った。 ギーシュが首を傾げて質問した。 「何故城にまっすぐ向かわないのです?」 その言葉にウェールズが上を見上げれば、城の上空に戦艦が下りてくるのが見えた。 「制空権は取られているのでね。このイーグル号ではあのフネに太刀打ち出来ない」 「なるほど。ありゃー確かにデッケェですな」 掌を目の上に平行に翳して戦艦を見上げたジョセフが、感心したように言った。帆の高さや砲門の数からして段違いだ。 「かつての本国艦隊旗艦、『ロイヤル・ソヴリン』号だ。叛徒達のものとなった今では『レキシントン』号と名前を変えている。奴等が初めて我等から勝利をもぎ取った戦地の名前を付けている。よほどの名誉と感じているようだ」 微笑を称えながらの説明を受けている間にも、レキシントン号は砲門を開き、ニューカッスル城に砲撃を加えていく。 「ああして時々嫌がらせのように大砲を撃ってくる。今ではあれも子守唄程度にしかならないがね」 レキシントン号の上にはドラゴンも数頭舞っている。 「見ての通り戦力の差は歴然、という奴だ。かの艦の備砲は両舷合わせて百八門、おまけに竜騎兵も積んでいる。当然我が艦があのような化物に敵う筈もないので、雲中を通り大陸の下から城に続く秘密の港に向かうという次第だ」 ウェールズの言葉通り、イーグル号は白い闇のような雲の中を何の苦もなく進んでいく。 「目隠ししながら航海しても大丈夫そうですわね、殿下」 卓越した航海術に感心したキュルケの言葉に、ウェールズは有難うと微笑んだ。 「これくらいのことは王立空軍なら出来て当然だが、貴族派の艦ではこうはいかない。あいつらは所詮、空を知らない無粋者さ」 ふぅん、とジョセフが横目でウェールズを見やる。 やがてイーグル号はマリー・ガラント号を曳航して秘密の港に到着した。 白い発光性の苔に覆われた鍾乳洞を改造して作り上げた港に停泊した船から、ジョセフ達はウェールズに付き従って城内の彼の居室へと向かう。キュルケとタバサは、船長室の例に倣って別室で待機である。 城の天守の一角にあるウェールズの部屋は、王子の部屋と言われても信じることが出来ない、屋根裏部屋そのものな部屋であった。あるのはベッドと椅子とテーブル、飾りと言えば戦の様子を描いたタペストリー。そのどれもが、平民が使うような粗末な代物だった。 ウェールズは机の引き出しから宝石箱を取り出し、中に入っていた一通の手紙を手に取り、名残惜しげな面持ちでキスをした。その時に、蓋の裏側にアンリエッタの肖像画が描かれているのが垣間見えた。 ウェールズから手紙を受け取り、代わりにアンリエッタからの手紙を差し出したルイズは、意を決して皇太子に戦況を聞いた。 ウェールズはただ事実のみを答える。ニューカッスル城に篭城する王軍の数三百に対し、ニューカッスル城を囲む貴族派の数、五万以上。ただ勇敢に討ち死にする様を見せ付けるしかない、と、三百の頂に座する皇太子は何の澱みもなく言ってのけた。 その言葉に、ルイズは走り出す胸の鼓動を抑えようと、大きく息を吸い込んでからウェールズになおも言葉を続ける。 手紙を自分に言付けた時のアンリエッタの様子、内蓋に描かれたアンリエッタの肖像、そして手紙にキスした時のウェールズの様子。それらを勘案すれば、よほど鈍感な人間でなければおおよその事情は理解できた。 アンリエッタ王女とウェールズ皇太子は恋仲だったのではないか、という質問に、ウェールズは多少悩んでから、答えを返した。「恋文だ」と。 彼の言葉に、外野の人間が約一名、この旅二度目の絶望に打ちひしがれた。 四百エキューを失い、憧れの姫殿下の心が亡国の皇太子のものであったことを認めざるを得なくなったギーシュは、絶望のドン底に掘られていた落とし穴に己の心が落ちていくのを感じていた。 「ああああ……姫殿下、姫殿下が……そんな……」 船長室と同じように……いや、もしかすればあの時よりもっと深く打ちひしがれた彼は、ただ両手両膝を床について倒れ伏してしまわないギリギリで踏みとどまっていた。 「……御老人。今度は一体何を賭けていたのかね」 「今度は何も賭けておりません。私事でしょうな」 多少呆れながらも、ジョセフはしれっとウェールズに言葉を返した。 絶望の世界に旅立ってしまった約一名を放置したまま、皇太子と大使の攻防が再開される。 恋文には始祖ブリミルに永遠の愛を誓った文面が記されているが、始祖に誓う愛は婚姻の際に誓うものでなければならない。もしこの手紙がゲルマニア皇室に渡れば重婚の罪を犯した姫との婚約を取り消す事になるのは火を見るより明らかである。 だがそのような手紙を取り交わした仲であり、かつ互いに今も想い合っている二人を、目の前で別れさせてしまうことはルイズには到底看過出来る問題ではなかった。 懸命に亡命を勧めるルイズは、見かねたワルドが肩に手を置いて制止しようとするのも構わずにウェールズへ詰め寄る。 けれどウェールズは微笑みを浮かべてルイズの懇願を受け流す。 かの手紙に亡命を勧めた一節があるはず、愛するアンリエッタ王女殿下の頼みを聞き届けてくれと食い下がる言葉に、やっとウェールズの微笑みに陰が差した。 だがそこまでだった。ウェールズはそっと首を横に振っただけだった。 「――私は王族だ。嘘はつかない。姫と私の名誉に誓って言うが、ただの一行たりとも、私に亡命を勧めるような文句は書かれておらぬ」 苦しげに言うウェールズの口ぶりは、ジョセフならずともルイズの指摘が当たっていたことが判るものだった。 ただ黙って事の成り行きを眺めているジョセフの存在さえも忘れ、ウェールズをひたすらに見つめるルイズだったが、彼の意思がどうしようもなく固いのは変えようのない事実。 トリステインの王宮貴族達に、アンリエッタが情に流される小娘だと思わせたくないのだと、思った。 ウェールズは潤んだ目で自分を見上げるルイズの肩を叩く。 「君は正直な女の子だな、ラ・ヴァリエール嬢。正直でまっすぐでいい目をしている」 悲しげに俯くルイズに、ウェールズは優しく微笑んだ。 「忠告しよう。その様に正直では大使は務まらぬよ。しっかりしなさい。しかしながら、亡国への大使としては適任だろう。明日に滅ぶ政府は名誉以外に守るものが他にないのだから」 優しげな笑みのままウェールズは、机の上に置かれた、水が張られた盆を見た。盆の上には針が載っており、形からしてどうやら時計のようであった。 「そろそろパーティの時間だ。君達は我らアルビオン王国が迎える最後の客だ。是非参加してもらいたい」 ジョセフ達は静かに部屋を退去する。 しかしワルド一人が何やら部屋に居残ったので、少年少女達の最後尾にいたジョセフはキュルケとタバサに目配せをし、足音を立てない後ろ歩きで扉の前まで戻って聞き耳を立てた。 途中からではあったが、ワルドが皇太子に何を語ったのかは把握できた。 明日、ルイズと結婚式を挙げるので媒酌人を務めて貰いたい、と。ウェールズはそれはめでたい話だ、と快く引き受け、ワルドがそれに恭しく感謝の意を示したところで、ジョセフはまたも足音を殺して扉の前を退去する。 一人天守から下りて行くジョセフの目には、ルイズには決して見せない怒りが渦巻いていた。 パーティが行われるホールに向かう途中の廊下で、ジョセフはルイズ達に問いかけた。 「さっき皇太子が言ってたよな、城の王党派は三百、それに対して城を囲む貴族派は五万とな」 ジョセフの言葉に、ルイズ達は軽く目をやって続きを促した。 「もしお前達が三百の兵が立てこもるこの城を落とすとしたら、用意する戦力はどれくらいだと思う」 突然の質問にルイズは不躾よ、と怒るが、ギーシュ、キュルケ、タバサ、ワルドは思考を走らせた。 「少なくとも五万は用意しない。多くても五千だ。正直、五万も動かしたら戦費が……」 命を惜しむな名を惜しめ、を家訓とするグラモン家の四男であるギーシュの言葉には実感がこもっていた。 「五千だって多いわ。地理的な条件を考えたとしても、三千もあれば万全だわね。それに向こうにはレキシントン号があるんでしょう? 制空権を取った城を落とすだなんて赤子の手をひねるのと同じ話よ」 キュルケが続いて述べた言葉に、タバサが頭を振った。 「おそらく、貴族派はニューカッスル城にレキシントン号を使えない。だから五万の兵を用意せざるを得なかったと見るほうが正しいかもしれない。けれどただの示威行為である、という可能性も濃厚」 ワルドがそれに頷いた。 「いくら貴族派が圧倒的優位とは言え、王党派も幾らかは紛れ込んでいるはずだ。もし彼らがレキシントン号に乗っていたりすれば、重要な局面で手痛い打撃を受けることになるだろう。だから、あえて参戦させないという選択肢を取らざるを得ない」 「それにさっき皇太子が言ってたわね、王立空軍には出来る雲の中の航海が貴族派には出来ないって。兵の錬度が低くて、自信を持ってフネを使えないと見た方が正しいのかもしれないわ」 キュルケはイーグル号での会話を思い起こしながら呟いた。 「それに五万がメイジだと言う事は有り得ない。その多くが平民の傭兵だと考えられる。使い捨ての戦力を投入することに貴族派が躊躇するとは到底思えない。 もはや貴族派の勝利は動かないなら、王族を駆逐する最後の戦いを飾るに相応しい幕引きに五万の兵を動かし、かつ切り札である空軍戦力を温存する、と言うのが五万の兵の理由として考えられる。勝ちの決まったチェスで相手を好きに嬲るのと同じ」 いつになく多弁なタバサの考察に、全員が思い思いに沈黙した。 それ以上の思考に耽る者、考えたくもないと渋面を崩さない者、何を考えてるか傍目には判らせない者。 六人は沈黙を守ったまま、ホールへと辿り着いた。 To Be Contined →
https://w.atwiki.jp/familiar_spirit/pages/1110.html
翌朝、トリステイン魔法学院は騒然としていた。 学院長室に、『破壊の杖領収いたしました』と書かれたメモ書きが発見されたのだ。 オスマン氏は急いで『宝物庫』を開けると、『破壊の杖』はものの見事に消えうせていた。 「ミセス・シュヴルーズ!当直はあなたなのではないですか!」 「そうは言ったって!あなた達だってまともにしてないでしょう!?」 責任のなすりあいをしている教師達を尻目に、オスマン氏は考えていた。 (フーケはどういった方法で侵入したんじゃろうか?) そのとき、ミス・ロングビルが現れた。 「ミス・ロングビル!どこに行っていたんですか!大事件ですよ!」 ミセス・シュヴルーズが食って掛かる。明らかに責任転嫁する気マンマンである。 「申し訳ありません。そのことで調査してまいりました」 「なんですと!」 ミスタ・ギトーが応じる。 しかし、ミス・ロングビルはそれを無視し、オスマン氏に報告を続けた。 「それと、ミス・ヴァリエールの使い魔が、今回の件について話があるようです」 オスマン氏は頷いた。 「そうか。分かった。使い魔君をこれへ」 ブチャラティと、露伴、ルイズ、それにキュルケとタバサも入ってきた。 「ん?何じゃ君達は。なぜ一緒に来た?」 「使い魔のことは主人が知る義務があります」 「ホホホ、…ミ、ミス・ヴァリエールの付き添いですわ!友人ですもの!」 「…同じく」 「まあいいわい。で、話とやらは?」 (ミス・ツェルプストーはなんであんなにあせっているのかのう?) 「昨日、『宝物庫』の扉を開けたのは俺だ」 キュルケの、「黙っときなさいよバカ!」というジト目を尻目にブチャラティは続ける。 「ルイズの『魔法』に、なにか為になるようなものがないかと思って入ったが、そのとき『土くれのフーケ』とやらにも一緒に侵入されたようだ。 すまない。できるだけ責任はとろうと思う」 「ななな、アンタ…えぇ~~~!!!」 「聞きましたか!この男が悪いんですわ!」 「学院長!この男を処刑しましょう!」 教師達が騒ぎ出す。 (ミス・ヴァリエールは初耳だったようだのう。) (なるほど。納得がいったわい) オスマン氏は自分の疑問に決着をつけると、全体に渇をいれた。 「黙れ!皆の者!」 とたんに静かになる。 「使い魔君の処置はワシが後で考えておく。それよりもじゃ。 今はフーケと『破壊の杖』の行方を捜すのが先決じゃ」 「そのことですが、オールド・オスマン。フーケの居場所が分かりました」 「何じゃと?」 「はい、近所の農民に聞き込んだところ、近くの森の廃屋に入っていった 黒ずくめのローブを見たそうです。 おそらく、彼はフーケで、『破壊の杖』もそこにあるかと」 「そこは近いのかね?」 「はい」 「ならばこうしよう。使い魔君たちに『破壊の杖』を取り返してきてもらおう。 それで『宝物庫』に侵入した件はチャラじゃ」 教師達が騒ぎ出す。明らかに不満そうだ。 「そんな!」 「それでは示しがつきません!」 「では誰か捜索に行くかね?志願者は杖を上げい」 抗議の声がぴたりとやむ。誰も杖を上げないようだ。 「やれやれ…」 いや、いた。ミスヴァリエールである。 「使い魔の責任は主人の責任でもあります」 そのうちにミス・ツェルプストー、ミス・タバサも杖をあげた。 「タバサ、あんたはいいのよ、関係ないんだから」 「心配」 「何を言っているルイズッ!これはとても危険なんだぞッ!」 誰よりも先にブチャラティが叫ぶ 「使い魔とメイジは一心同体でなければならないの! アンタには分からないだろうけどッ!」 そういい捨ててルイズはさっさと出て行ってしまった。 露伴が他人事のように発言する。 「おい、ありゃ連れて行くしかないようだな」 「……お前が言うなよ…」 五人はミス・ロングビルを案内役に、荷車の馬車で出発した。 御者はミス・ロングビル自身が行っている。 「ミス・ロングビル…手綱なんてロハンあたりにやらせればいいじゃないですか」 「いいのです。私はすでに貴族ではないのですから」 「差し支えなければ、事情をお聞かせ願いたいわ」 ルイズたちがミス・ロングビルとの話しに夢中になっている隙に、ブチャラティは露伴にメモを差し出した。 「オイ、君ハイタリア語ガ書ケルカ?」 露伴が別のメモで返す。 「アア、大丈夫ダ」 「先ホドノ彼女ノ話ナンダガ…ドウ思ウ?」 「ドウモ『ウソ』クサイナ…『土クレノフーケ』は今マデ正体スラホトンド分カッテイナイ凄腕ノ盗賊ダ。アマリニモ証拠ヲノコシスギル… ソノ農民トヤラモ警戒スル必要ガアルナ」 「『証言ソノモノガ真実カドウカ』モナ」 「ドウイウコトダ?」 「オレハ彼女ガ怪シイト思ッテイル」 露伴がミス・ロングビルの方を見ると、 全員が会話をやめ、二人を見ていた。 「あんた達!また私に内緒で!何してたの! 内容を吐きなさい!」 「い、いや…雑談だって…」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ… 「お、おい…戦闘があるかも知れないのに魔法を使うのはよせッ!」 「うるさい」 ルイズがファイアーボール(失敗)を唱える。 「「『空気』が!『火』を吹いたッ!」」 吹っ飛ぶ二人。馬車から地面へと落下していく… 「やりすぎよルイズ!」 「なに?あの爆発…」 一行は廃屋を前にして、近くの森の茂みに身を隠していた。 馬車はここからかなり遠くのところに隠してある。 『土くれ』のフーケにバレるのを防ぐためだ。 「君の情報が正しければ、『土くれ』のフーケはあの中にいるな」 生傷の残るブチャラティはミス・ロングビルに話しかけた。 治療はタバサにしてもらったが、完全には直りきってないようだ。 「はい。おそらく『破壊の杖』もあそこにあると思われますわ」 「分かった。ではこれから作戦を指示する」 「ちょっとブチャラティ!何でアンタが仕切ってんのよ!」 「別にいいじゃない。ルイズ。ダーリン、とても強いんだし」 「彼に従ったほうが、得策」 「…まず、俺を含めた少数のものがあの小屋を偵察する」 「で、状況に応じて戦闘を行うか盗み出すかするから、残りのものはここに潜んで待機していてくれ」 「それと、今回の最大の目的は『破壊の杖』をGetすることだからな。 『土くれのフーケ』を倒すことじゃない。その辺を間違えるな」 「何でよ!」 ルイズは不満そうだ。 「戦闘になった場合、ここに潜んでいる者たちが支援してくれ。 十中八九、戦うことになるだろーからな…」 「まあ、そういうことならいいわ」 「そんなことより、ダーリン。あなた大丈夫?」 「いや、大丈夫だキュルケ。戦闘能力に支障はない」 「それより偵察を行うメンバーだが…」 「露伴。いいか?」 「ああ」 「それと…ミス・ロングビル。君にはぜひ来てもらいたい」 「え?私?」 「そう、君だ…」 「君は確か『土』系統のメイジだったな… 前にルイズの部屋の修理をしてくれた…」 露伴が先を続ける。 「『土くれのフーケ』は巨大なゴーレムを作るって言うじゃないか? そういう場合、君のように同じ『土』系統のメイジがいると何かと便利だと思うぞ?なあブチャラティ?」 「ああ…」 「わ、分かりました…」 「私も行く…」 「タバサ。君は『治癒』の魔法を使いすぎた。 僕は、個人的にはここでサポート役に徹してほしい」 「分かった。待機する…」 小屋の中には誰もいなかった。 小屋自体は雑然としていたが、 中央に『M72ロケットランチャー』が鎮座していた。 「ありましたわね…」 ミス・ロングビルがそれを取ろうとすると、露伴がさえぎった。 「どれだ?」 「え?あなた知ってるはずでしょ…」 (しまった!) 「おやァ?何で『僕』が『破壊の杖』を知ってると思ったのかなぁ?」 「だって…えと、ブチャラティさんがオスマン氏に『宝物庫』に入ったって言うし… そのときに見たと勝手に自分で思い込んだんですわ!」 (ヤバいッ!こいつらッ!私を疑ってやがるッ!) 「そいつはおかしいな… 俺は『宝物庫を開けて入った』といったが、『ロハンも一緒だった』とは 一言も言ってないぜ…」 「まあ、バラしてしまえば僕も『宝物庫』にはいっているんだがね… それでも『なんで君は僕が破壊の杖を知っていると思った』のかなぁ? もしかして…実際に触っているのを『見た』とか…?」 「い、いえ。ブチャラティさんもロハンさんも同じミスヴァリエールの使い魔でしょう? いつも一緒にいると思ったのですわ!」 (まだよッ!正体をばらすようなマネは…何とかして『露伴』と『ブチャラティ』を引き離さないと… 生身の私にとってはブチャラティの『能力』はヤバ過ぎる!) 「こいつは…調べる必要があるな…」 「ああ…」 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ… (ヤバイッ) 「二人とも?ちょっと、やめて!近寄らないで!」 ミス・ロングビルはおびえた用に後ずさりしながら、小屋にあるものを手当たり次第に二人に投げつけ始めた。 いや、彼女は本気でおびえていた。 「おとなしくしろ。でないと…『拷問』する羽目になる…」 「キャァアアアアア!」